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ジャンル不問萌え語り&日常/女性向け同人要素過多・要注意
2009/05/26 (Tue) 07:47
一寸まだFTP接続するの怖いのでコッチに一時上げておきます。「磨響」(まきょう)ってタイトルです。かなり走り書きなので、話組み直して推敲して加筆したら凄い長くなったりするかもです。現段階では短文で一応完結してます。逆裁4絡み、時系列的にはウチのTEXT2の「逝旦夕」の数年後の、ゴドー45歳×成歩堂38歳です。おっさんハァハァ
----------------------------------- 磨響 ----------------------------------- ソファに横座りして手紙を開いているところへ、 丸で開封し始めるのを見計らっていたかの如く事務所の扉が開いた。 糊付けされた封を開き続けるビリと云う音と、 扉が開くパタンと云う音が酷く小気味良い調和をなしたものだから、 普段は誰が来ようとも気に止めたりなどしないのに、 成歩堂は珍しくも顔を上げて入口を見遣った。 少しだけ、期待していたのかも知れない。 だから其処に立っていた長身の男を確認して、正直肩透かしを食った。 どちらにしたって予想に反した登場人物ではあったのだが、 期待半分、諦観半分だった気持ちはそれこそ、 落胆するような歓喜するような、実に中途半端な形で胸中に留まることになった。 「なんだ、ゴドーさんか」 「クッ・・・!相変わらず愛想の無ェ男だぜ」 白い髪が室内灯を浴び、根許の部分が少しだけ茶色く見えた。 その顔の大半を覆っていたマスクを最後に見たのはいつだっただろう。 もうすっかり素顔にも慣れてしまった。 その内、眼鏡すら取れる日が来るのかも知れない。 成歩堂はそうして彼を見上げたまま、腹の底に広がった安寧に溜息を吐く。 「別に嬉しくない訳じゃないですよ」 「知ってるさ」 悠然と答えてみせるゴドーに成歩堂は微笑む。 ゴドーは軽く室内を見渡してから、 ソファに座っている成歩堂を退かせるように裏手を振り、 成歩堂が少し後退したのを確認してから隣に腰を下ろした。 「・・・期待したかい?」 「うるさいな。判ってるならわざわざ云わないでくださいよ」 「まさか、一週間程度で出戻るようなおじょうちゃんじゃねえだろう?」 「だから判ってるって」 成歩堂の返答に、ゴドーは喉の奥で笑う。 揶揄われているのは百も承知なのだが、それでも悔しい。 「・・・アンタ、思ってた以上に過保護だぜ」 「最初から知ってたでしょ」 「クッ・・・!まるで恋煩いだなァ」 「ゴドーさんだって、春美ちゃんが海外に行ったら、 今の僕の気持ちが痛いほど判りますよ」 「嫁に出たら尚更大変だろうぜ」 「・・・嫁には出しません」 ゴドーが笑うのを歯痒い気分で眺めながら、成歩堂は作業を再開する。 何故にこうもカッチリと封をしているのかと半ば苛立っていると、 何してるんだアンタ、とゴドーが云った。 「何って。見りゃ判るでしょう?手紙を開けようとしてるんですよ」 「・・・ペーパーナイフぐらい使えばいいぜ」 「そんな上等なモンはこの事務所にはありません」 「カッターくらいならあるんじゃねえのかい?」 「出すのが面倒だったんです」 「ならば、テープのほうから開けばいいじゃねえか」 「破れるかも知れないじゃないですか」 不器用かいコネコちゃん、と云ってゴドーが再び笑みを浮かべた。 成歩堂は手紙に視線を落とす。 淡いブルーの便箋は、開封口に不必要なほどの頑丈なテープが貼られており、 当初こそはそのテープを慎重に開きにかかったのだが、 どう巧くやったところで、封筒が破れるのは目に見えてしまったから、 結局は諦めて、開封口とは反対側の、糊付けされた側を中途まで開いていた。 「昔、裁判所で資料を貰った時なんかもそうだったんですけど、 何だってこういう封筒にこんな頑丈なテープを貼るんですかね」 「うっかり開いちまわないようにする為だろうぜ」 「そんな事は判ってるんですけどね。今の僕みたいに、 結局はこっち側から開いてるんじゃ、開封口の意味が無いと思いませんか」 成歩堂が手紙を掲げてみせると、 ゴドーはニヤニヤとした笑みを成歩堂へと真っ直ぐに向け、 だからカッターを使えよ、と無駄なのを判っている口調で云った。 「クッ・・・!オレもよくそうして逆から開けたがなァ」 「お。やっぱり?意外と、元から糊付けされてる側のほうが 簡単に開けられたりするんですよね」 「中身が厚ければ余計だろうぜ」 成歩堂の手からヒョイと手紙を奪ったゴドーは、 途中まで剥されていた封の隙間に指を差し入れ、ピリピリと器用に開き切った。 「・・・アンタのコネコちゃんからの手紙かい?」 中を確認しないまま、ゴドーは成歩堂にポイとそれを投げ返し、 ソファに背中を預けて長い脚を持て余すように組んだ。 「まあ、僕に手紙なんてくれるのは、真宵ちゃんかみぬきぐらいですから」 「オレも書いてやろうか?」 「返事は白い便箋に赤い字で書いてあげますよ」 中身を取り出しながら厭味の応酬をすると、 封筒の中からポトリと何かが床に落ちた。 成歩堂が手を伸ばすより早く、ゴドーがそれを拾い上げる。 「妬けるんじゃねえか、まるほどう?」 人差し指と中指で掴み、見せ付けるようにゴドーが掲げたのは、 馴染み無い風景の中に立っているみぬきと或真敷バランが微笑んでいる写真だった。 「・・・。妬けると云うより」 「羨ましい、か?」 「そうですね」 「ならばアンタも行けば良かったじゃねえか。 ギャンブラーなら、何処ででも稼ぎ扶持はあるんじゃねえのかい?」 「ギャンブラーじゃなくてピアニストです。 みぬきが居なきゃ、僕はギャンブラーとしても食って行けませんよ」 「ピアニストじゃ余計食えねえだろうさ」 尚更みぬきと一緒に居た方が良かったんじゃないか、と 今にも云い出しそうなゴドーを制するように成歩堂は片手を上げる。 「僕にはこの事務所からありますから。 千尋さんが僕に残してくれた、この事務所が、ね。 此処を誰かに引き継がない限り、 仮令みぬきが魔術師として海外デビューしたいと云ったとしても、 僕は彼女と一緒に行く事は出来ませんよ」 「クッ・・・!それで妬いてるんじゃ世話ねえぜ」 「バランさんが一緒だから大丈夫です」 「本気で云ってるのかい?」 「本気だったらわざわざ云いません」 ゴドーが失笑するのを見て、成歩堂は苦笑いを浮かべる。 元々、みぬきを海外に誘ったのはバランの方だった。 正式に或真敷天斎の魔術権利がザックからみぬきの手に渡り、 彼女の達ての希望から、その権利はザックと共有され、 そうして開かれた或真敷一座の魔術ショーは、 実に華麗なる或真敷一座の復活となった。 成歩堂が云うのも何だが、それは見事なものだったのだ。 そうして国内ので名誉が挽回されると、 或真敷バランは今度こそ世界を目指そうと、 みぬきに持ち掛けたのである。 魔術師としてのプロ意識が誰よりも高いみぬきが食いつかない筈は無かった。 「一緒に行こうとは云われましたよ、勿論」 「『パパはアレ、みぬきが居ないとダメだしね』とでも云われたかい?」 「まさにその通りですね。そもそも、彼女のほうが生活費を稼いでたから、 僕だけじゃ食っていけないってのを判ってたんでしょう」 「クッ・・・!どんなに旨い珈琲も、カップに注がれてなけりゃ意味がねえ」 「飲めませんからね。・・・で、どういう意味ですか」 「弁護資格を取ってねえんじゃ、弁護士にも戻れねえって事さ。 せめて弁護士ならば、幾ら崖っぷちのアンタでも多少は食えたんじゃねえのかい?」 そう、牙琉霧人との攻防戦が終わって早五年。 成歩堂は未だ、あの頃と同じように過ごしている。 「オドロキくんが頑張っているのを見てるうちに、 僕がまた弁護士に戻る必要は無いのかなと思ってきちゃって。 裁判員制度の委員長を続投してる所為もあるかも知れないですけど、 資格があろうと無かろうと、僕は未だにこうして法曹界に関わり続けてるから」 「・・・牙琉霧人が戻るのを待ってるんじゃねえのかい?」 「・・・・・・。彼が出て来ることはもうありませんよ」 「だが、死刑の執行はされてねえ。 アンタとトドロキが死刑反対運動に加わった所為だ」 「トドロキじゃなくてオドロキですよ。 それに僕達が反対運動に加わった所為ばかりじゃない。 昨今、死刑の執行が為されなくなったのは、 元々はゴドーさんが星影先生を通じて署名運動を繰り返したからじゃないですか。 法が改訂される日も近いんじゃないですか?」 「・・・・・・・・・・」 「春美ちゃんのお母さんの為でしょう? どんな大罪を犯したとしても、春美ちゃんにとって 綾里キミ子は永遠に彼女のお母さんだ。 彼女達が母親を亡くすような事態を、ゴドーさんはもう見たくないんだ。 僕が反対運動に加わったのは、牙琉の為じゃない、 ゴドーさんのその気持ちを知ってたからですよ」 「結果的には、アンタの『親友』も救われるぜ?」 「救う・・・ってのとは違うじゃないですか。 確かに、もし法が改訂されれば、牙琉の死刑も執行されなくなるかもしれない。 その方が僕だっていいとは思ってます。 でも、本当にそれだけの為に反対運動に加わった訳じゃないですよ。 僕も、オドロキくんも」 「・・・少しは成長したようだな、まるほどう」 「当たり前ですよ。ゴドーさんにもいい加減、 本名で呼ばれてイイぐらいには、無駄に歳は食いましたから」 成歩堂はそう云いながら、自分こそ彼をゴドーと呼び続けているなと思った。 それも何だか余りに今更で、少し愉快だと思った。 隣に座っているゴドーに視線を向ける。 眉間や目尻に幽かに刻まれた皺が、彼の貫禄に益々拍車を掛けているようだ。 出会った頃からずっと、ゴドーは大人だった。 成歩堂にとってのゴドーはずっと、手の届かない大人の男だった。 それが悔しかった頃もあったが、今は届かないことが有難いと思うようになった。 生きている以上は一生、歳を追い抜くことは出来無いからだ。 届かないと云うことは、互いが生きている証拠なのだから。 「まあ、精神的な大人って意味では、近づけるのかも知れないけどな」 「・・・?」 「僕はもう、千尋さんの歳より十個も上ですよ」 「クッ・・・!精神的にはまだまだガキだがなァ」 ゴドーはそう答えてから、なる程、とでも云うように頷いた。 成歩堂が先に呟いた言葉の意味に気付いたのだろう。 成歩堂はゴドーを再度見る。 スっと伸びた項が美しい。 法曹界を去ってから後、彼はずっと短髪のままだった。 「もう、髪は伸ばさないんですか?」 ゴドーが成歩堂と視線を合わせるように首を傾けた。 「襟足を伸ばして、素顔を隠して、 あの頃のように真っ向から僕に異議を唱えてくるような、 熱い感情はもう、ゴドーさんの中には無いんですか?」 「・・・。何故そんな事を聞くんだい?」 「え。いや別に。何となくそう思っただけです」 「何となく、ねえ・・・。相変わらず妙なところでタイミングを外さない男だぜ」 「・・・?」 「成歩堂」 「な、何ですか急に」 「アンタのコネコちゃんが海外に行っちまって、 弟子のウサギちゃんも弁護士五年目となれば、 アンタが一人になる日も近いだろうぜ」 「何だか不吉な云い方だなあ」 「だが、そうしてアンタのコネコちゃん達が巣立って行こうと、 アンタは此処を守る為に残るだろうさ」 「まあね。千尋さんが残してくれた所だし」 「みぬきが戻るまで待つつもりかい?」 「其処までは考えてなかったけど。それに、その・・・ 厭だけどみぬきだって、そのうち嫁に行くんだから、 そしたら待ってるも何も、彼女の戻る場所は此処じゃなくなりますよ。 僕は本当の親でもないしね。ラミロアさんだって居るんだし」 「アンタさっきは、『誰かに此処を継がせない限りは』と云ったな」 「・・・あ、そ、そうですね。そういえば」 「トドロキに此処を譲っちまったらどうだい?」 「・・・・・・・・・・。はい?」 久しぶりに成歩堂は、弁護席に立っていた頃さながらの冷汗をかいた。 思わずニット帽を取る。ゴドーが小さく笑った。 「で、でも、此処は千尋さんの事務所で・・・ それはゴドーさんにとってだって大事な場所だからって僕は」 「そうだな」 「そうだなって、だったら」 「もう、無精髭は剃らないのかい、まるほどう?」 「・・・!」 「髭を剃って、ニット帽を取り、勝負服に着替えて、 オレに真っ向から異議を唱えるような、 熱い思いはもう、アンタの中には無いのかい?」 「そ、それは・・・」 ゴドーがスっと腕を上げた。 いつの間にかその手に、カップが握られている。 「またコイツを奢ってやるぜ、まるほどう。・・・戻って来い」 「戻って来いってだって、ゴドーさんこそ」 「オレは法曹界に戻るぜ」 「・・・!」 「アンタの『本当の』親友が、検事局長になった話は当然聞いてるだろう?」 「御剣・・・ですか?それは勿論聞いてますけど・・・」 「ヤツの引き抜きさ」 「ば、バカな!ゴドーさん検事に戻るんですか?!」 「そうさ。いつまでも弁護士に戻らねえアンタを見てたらもどかしくなっちゃったぜ。 此処を本気で守りたいのならば、アンタが弁護士じゃなくてどうするんだい? そんなモンならさっさと弟子に譲っちまいな!」 「そういうこと・・・ですか」 「一から鍛え直してやるぜ、まるほどう。 オレはアンタと戦う為に地獄から戻って来た男なのさ。 アンタと戦う為なら、戻ってやるぜ。・・・何度でも、なァ」 「ゴドーさん・・・」 成歩堂は手の中のニット帽と手紙に視線を落とした。 みぬきからの手紙――恐らくは其処にも書いてあるだろう。 彼女が出国する以前から、成歩堂は幾度もみぬきに云われていたのだ。 『パパも意地張らないで、弁護士に戻ったらイイんじゃない?』 彼女から見れば、意地を張っているように見えたのだろうか。 けれど確かに、そう云われて初めて気付いたかも知れない。 「・・・・・・。また華麗に引導を叩きつけますよ、ゴドーさん」 「クッ・・・!望むところだぜ」 「何度やったって、僕が勝ちますよ」 「生憎アンタに負けた憶えもねえぜ」 (全敗じゃないかよ!) 「特にベッドの中ではな・・・」 「異議あり!あれは勝ち負けじゃありませんっ」 成歩堂は思わずそう云って立ち上がると、 ゴドーはふてぶてしい笑みを零した。釣られて失笑する。 「・・・そうだな。初心に返るのも悪くないかも知れない。 ちょっと歳は食っちゃいましたけどね」 「異議あり。色気が増したと云って欲しいモンだぜ」 「確かに、歳食ってセックスのくどさは増しましたよ」 云い返してやると、一回が長くなったんだから当然だ、と云われた。 是が非でも歳を取ったことは認めないつもりらしい。 「・・・御剣に笑われるだろうなあ。今更弁護士に復帰したら」 「クッ・・・!アンタはスカウトじゃねえようだからな・・・」 「全く御剣の奴、ゴドーさんを引き抜くなんてズルイじゃないか」 思わず本音を零すと、ゴドーはこの日初めて、柔和な笑みを見せた。 「もう暫く此処は、オドロキくんには譲れないな」 それから一年弱。 「オドロキさん、こっちです!」 「おお、如何にも魔術師って感じだね」 「えへへ。何せみぬきは、プロフェッショナルですからね」 初めての海外で右も左も判らずだった王泥喜を空港まで迎えに来てくれたのは、 魔術師の服装をカッチリと着込んだみぬき当人だった。 その変わらない笑顔を見た途端、 安堵で荷物が重くなったようにすら思えた王泥喜であった。 「パパも来られれば良かったんですけどねえ」 「ダメだよ、あの人高いところ苦手じゃないか」 「あ、オドロキさんも漸くパパの事を覚えましたね。 パパはああ見えてアレ、高所恐怖症、ですから」 「その君のパパだけどさ」 「パパ元気にしてますか?オドロキさん、ちゃんとお世話してくださいね」 「大丈夫だよ。ピアニストよりは向いてるみたいだから」 「弁護士さんなら、どの音がドの音か判らなくても平気だしね」 「・・・・・・」 「どうしたんですか、オドロキさん。顔色がアレ、ブルーハワイですけど」 「オレの地位が危うくなってきたなと思ってね・・・」 「オドロキさんも鍛えて貰えばイイじゃないですか。・・・ゴドー検事に」 「そうだな。オレも珈琲奢られてこようかな・・・」 「奢って貰ったら、アレ、云わないと」 「判ってるよ。異議あり!・・・じゃなくて、オレ大丈夫です!」 「わぁあ、凄いんだ。さっすがオドロキさん」 「暫く、こっちの広大な世界で勉強するよ」 「弁護士の勉強ですね」 「いや、発声練習の」 「・・・。オドロキさん。もっと現実を見なきゃダメですよ」 <終> PR この記事にコメントする
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